購入本/読了

琉球の星条旗 「普天間」は終わらない

琉球の星条旗 「普天間」は終わらない

速攻で読み終える。300ページ以上の本を購入当日に読み終えるのは何年ぶりだろうか・・・。

2009年から2010年の鳩山政権の関係閣僚を中心とした、政界でのこの問題の動き(経緯)を把握するのには使える。逆に言うと、ほとんどそれだけなのである。ただ森本氏による『普天間の謎』でも、この経緯はそれなりに整理されている。わたしとしては、事実経過の整理だけとっても、森本氏の本のほうが役に立った。理由は簡単である。本書は、ただ新聞社らしいドキュメンタリータッチで時系列に追っているだけだからである。これに対して森本氏の本では、章立てはおおむね時系列なのだが、章のなかでは閣僚別、移転プラン別に叙述されていたりするので、こちらのほうが整理されていてわかりやすいのである。

本書を読んでも、この問題をどのように考えれば良いのか、ほとんど見えてこない。森本氏の本は、(必ずしも賛同できない部分も多いのだが)この問題を現実主義の立場からどのように考えれば良いのかが示されている。本書にはそれがない。ただ単に政界模様(及び一部の官僚)を追っただけという印象である。森本氏の本のほうが、圧倒的にCPが高い。

本書を読んでもっとも役に立ったのは、2009年11月の米国防総省による環境アセスの素案から、在沖海兵隊8000人のグアム移転そのものが、グアムのインフラのキャパシティの面で難しくなってきた、という指摘である(p.251)。グアムは面積で沖縄の半分弱、人口は約16万人しかいない。そこに2014年の移転時には米軍関係者が約4.6万人も加わるという(米軍再編による沖縄以外からの流入も含まれていると思われる)。しかも工事関係者も2014年には約7.9万人も流入するという。電力、上下水道などのインフラの不備は明らか、というわけだ。米国は辺野古海兵隊移転計画をパッケージとして扱おうとしているが、そもそも普天間云々とは関係なくグアムへの海兵隊移転計画が無理筋になってきている、という(p.252)。

米軍再編の進捗についてはともかく、在沖米軍基地について言えば、辺野古移転は進まず普天間は当分このまま固定の蓋然性が極めて高い。森本氏は「普天間基地問題をどこかに代替地を求めて返還するという命題は間違いではなかったのか。なぜこの問題にこれだけ時間と労力をかけ、リスクを負う必要があったのであろうか」とまで言う(森本『普天間の謎』p.547)。ただこの部分だけ読むと、普天間はこのままで良いと森本氏が考えているように見えるが、同氏も別のところでは「筆者も米軍再編協議の時代から浅瀬案論者であった」(p.516)と述べているので、正直言ってよくわからない。いずれにしても、普天間周辺で事故が起きた場合、これまで以上に反基地感情が噴き出し、日米同盟が揺らぐリスクがある。この問題は、「進むも地獄、進まぬも地獄」になってきつつある。