台湾PC企業のブランディング

台湾にダイアローグというパソコンメーカーがある。最近、ダイアローグ・ジャパン(東京都新宿区)を設立して日本市場にも参入してきた。同社は、開発工程を台湾と米国で、デザインをイタリアで手がけているとのことであり、このように各工程を世界中の最適地に分散させるのは、最近のノートパソコンの生産の特徴なのだが、それはどうでもよい。問題は、この製品発表の記者会見で、「『イタリア人好み』のブランドイメージをアピール」するために「外国人のモデルが出演するファッションショーも行われ」たということである。その(イタイ)写真がこれ(↓)。

http://it.nikkei.co.jp/pc/news/index.aspx?n=MMITda000015062006


パソコンのブランディングも、ついにここまで来たかと思わざるを得ない。それは、こういうことである。


一般的に、セクシャルなイメージを打ち出して消費者の欲望を喚起し、そのイメージによってブランドの構築と認知を図るという販売戦略が必要とされる製品は、アルコールやコーラなどの飲料、タバコ、剃刀などである。なぜこれらの製品で、セクシャルなイメージを活用したブランディングがなされるかというと、製品の需要を喚起したり差別化を図るうえで、機能・信頼性・利便性・価格のいずれに訴えることもできないからだと思う。タバコにしろアルコールにしろ、極言すれば、どの商品であっても値段や機能が大きく違うわけではない。だから、数多い類似製品のなかから当該製品を認知し、選んでもらうためには、何らかのイメージに訴える必要がある。しかも、生きていく上での必需品というわけではないこれらの製品を需要してもらうためには、消費者をして、「その製品を使用することで、何かよりよい生活が送れる」と錯覚させる必要がある。発泡酒やビールのコマーシャルには、よく「青い空」「白い雲」「明るく笑う男女」が出てくるが、これなども「青い空」「白い雲」の下で「明るく笑う男女」の一人として楽しくビールを飲みたいという消費者の潜在的な欲望に訴えかけているわけである*1。現実に発泡酒やビールが飲まれるシチュエーションの99%以上は、このようなものではないのに、映像が提供するイメージによって、われわれは、なにかその製品を手にすればCMで繰り広げられている楽しい世界に近づけるかのような気にさせられ、その製品をつい買ってしまう。


そういうわけで、ダイアローグが、微妙にセクシャルな「外国人のモデルが出演するファッションショー」を行なったというのは、日本市場への参入にあたって、同社が他社との差別化に苦慮していることの現れであるようにも思えて、どうも哀れみを感じてしまう*2。それにこのファッションショー、色気路線なのか、スタイリッシュ路線なのか、イメージの喚起の仕方がどうにも中途半端で、どことなく痛々しい気がする。

http://www.business-i.jp/news/ind-page/news/200606160001a.nwc

*1:キリンの「極生」のほか、アサヒの「アクアブルー」や、サッポロビールの「ドラフトワン」などがいずれも青でデザインされているのも、消費者の欲望と深層意識への働き掛けを狙ったものだと思う。

*2:実際には、液晶が回転するなど、同社の製品の機能に面白みはあると思うが。