運営費交付金問題:国立大学法人は「歴史的崩壊」の瀬戸際

最初っから弱気なことを言ってアレだが、なんかもう国立大学法人は半分「終わった」ような気がしないでもない。このまま運営費交付金の傾斜配分が始まると、国立大学法人は大崩壊に至ること必定である。


そこでその場合の再編方法だが、いきなり大学を丸ごと潰すというのはむつかしいので、以下のような方法がありうるのではないか。すなわち、たとえば、秋田大と弘前大と岩手大で3つも教育学部はいらないから、教育学部は秋田大に集約する代わりに、弘前大と岩手大は教育学部を放棄する、その代わりに秋田大は医学部を放棄して、秋田大学医学部は弘前大に集約する、あと農学部も岩手大と弘前大で二つもいらないから、農学部は岩手大に集約してしまえとか。要するに、企業の「事業交換」ならぬ、大学の「学部交換」が進むのではないか、と*1

で、場合によっては「北東北連合大学」(仮称)というのができて、医学部は秋田キャンパス、教育学部弘前キャンパス、農学は岩手キャンパス、と。


ついでに、農学部山形大学にもいらない、これも岩手大学に集約してしまえ、その代わりに、岩手大の工学部は山形大に移管、とかいうのもありえるかもしれない。
こういうアイデアは、荒唐無稽では、断じてない。なぜならば、帯広畜産大学弘前大学岩手大学山形大学の4大学で「連合農学研究科」というものが、既に岩手大学にできあがっているからである。この連合大学院を母体にすれば、学部の再編集約もやりやすいはずである。



と、ここまで書いてきて、ふと思ったのだが、じつはこれ、キヤノン・御手洗氏の「大九州大学構想」に近い。
http://www.keidanren.or.jp/japanese/speech/20060828.html
じつは自分は、御手洗氏が大九州大学構想をぶち上げたときは、「何を寝ぼけたことを」を思った。しかし今になってよく考えてみると、御手洗氏は経済財政諮問会議のメンバーなのであり、この経済財政諮問会議の4人のメンバー(御手洗、伊藤忠丹羽宇一郎東京大学伊藤隆敏国際基督教大学八代尚宏)から、国立大学法人を歴史的崩壊に追い込みかねない、運営費交付金の傾斜配分を求めるペーパーが出てきているのだ*2。おそらく、経済財政諮問会議は、最終的には、学部交換方式で国立大学法人を大規模に再編することを狙っているのだろうと思う。


つまり、運営費交付金問題の傾斜配分は、お題目はともかく、実はこういう再編のための梃子なのではないか。これにより、まず国立大学法人の多く(の運営)を半殺しにした上で、「生き残れないんだから、再編集約しなさい」と迫ってくる、こういうシナリオが、中期的に描かれているのではないかというのが、自分の読みである。


そういうわけなので、運営費交付金の傾斜配分というアイデアをきちんとストップさせられるか、日本の高等教育はいま、きわめて重大な歴史的局面に差し掛かっている。なお、困ったことは、経済財政諮問会議における大学関係者というのは、東京大学伊藤隆敏国際基督教大学八代尚宏の二人だけで、しかもこの二人が二人とも、運営費交付金の傾斜配分を求めるペーパーに名前を連ねている、ということだ。だからこの場で反対意見を述べることのできる、大学関係者は、一人もいない。こういう経済学者二人のおかげで、経済学そのものに対する怨嗟が高まるかもしれない。

 
(追記)
運営費交付金問題が話し合われた経済財政諮問会議の会議議事録(平成19年2月27日)
http://www.keizai-shimon.go.jp/minutes/2007/0227/shimon-s.pdf
読むに耐えないが、誰が何を発言しているのか、よく見ておく必要がある。
御手洗議員→大学の「選択と集中」がモットー。
塩崎議員→「先進的な大学院の授業は全部英語で」がモットー。
各議員に共通しているのが、「アメリでは・・・」「アメリの場合は・・・」「アメリの・・・」・・・おまえらどこの国の人ですか。そういえば御手洗議員はアメリ勤務25年、塩崎議員は東京大学教養学部教養学科アメリ科卒業、アメリ・ハーバード留学経験あり、伊藤議員はアメリハーバード大学Ph.Dかつミネソタ大学に勤務経験あり、か・・・・・・。