読了せず(ジャン=マリー・シュヴァリエ『世界エネルギー市場』)

世界エネルギー市場―石油・天然ガス・電気・原子力・新エネルギー・地球環境をめぐる21世紀の経済戦争

世界エネルギー市場―石油・天然ガス・電気・原子力・新エネルギー・地球環境をめぐる21世紀の経済戦争


これはかなり良い本である。

石油、天然ガスのほか、電力市場や温室効果ガスなども扱われており、資源というよりエネルギーの生産と商品をめぐる政治経済を論じた書だが、類書にはない有用な情報が数多く含まれている。

たとえば、「オランダ病」という言葉を最初に使ったのは、英『エコノミスト』の1977年11月の号だったとか、産油価格は22ドルを下回ると、コスト的に赤字になる油田があるので、基本的には1バレル22ドル以下にはほとんどならない(例外は98年のアジア経済危機の直後)とか、しかし世界平均では原油の生産コストは1バレル7ドルぐらいだとか、「ほほう」と思えることがいろいろ書いてある。

確認可採埋蔵量という概念はきわめてアテにならない概念だとか、確認可採埋蔵量と原始埋蔵量の違いを峻別しないといけないとかもしっかり触れられている。このあたりは、浜田和幸『石油の支配者』(文藝春秋)*1と同じだが、著者はケンブリッジ・エネルギー研究所(ダニエル・ヤーギンが所長)のスタッフ兼フランスの大学教員というだけあって、浜田書よりもクオリティは断然高い。すべて読んだわけではなく拾い読みだが、オススメである。