読了(カルドー『人間の安全保障』、メイヨール『世界政治』)

「人間の安全保障」論 (サピエンティア)

「人間の安全保障」論 (サピエンティア)

世界政治―進歩と限界

世界政治―進歩と限界

民主主義、人権、国家主権、人道的介入などについて、対照的な立場に立つ二人の書物を読んだ。両者を読んで痛感させられたのは、いまや国際政治を学ぶ者にとって国際法、とりわけ国際人道法、国際人権法についての最低限の知識と理解が求められるのだ、ということである。

コスモポリタニズムの立場のカルドーの『人間の安全保障』は、日本で語られがちな人間の安全保障論とはかなり一線を画している議論である。同書は『新戦争論』を読んでいないと、理解が難しいかもしれない。また、国際人権法、国際人道法についての理解も求められる。実際、この本は、カルドーの論文の寄せ集め本、つまりガチガチの専門書である。

メイヨール『世界政治』は、カルドーとは逆に、国家は(国際)法のしもべでは依然としてない、という立場。2000年に刊行された本ではあるが、古さを感じない。ナショナリズム、自決といった考え方と、それが国際関係にどのように反映されているかといった考察が有益だった。同書も、ナショナリズム研究におけるシビックナショナリズムvs.エスニックナショナリズムの対立についての予備的な理解があったほうが読みやすいだろう。

両者は対照的な立場から、自決、ナショナリズム、民主制、人権、人道的介入などについて論じており、現代の国際関係、とくに途上国における平和構築や国家建設などを考える上で有益である。