メモ(引用)

レーヨンフーブド「エコン族の生態」より

「エコン族(経済学者集団)は、先祖伝来の極北の地に居住する民族であり、隣国のポルスシス族(政治学者)やソシオグス族(社会学者)に対する優越感を満喫する極端に排他的な民族である。彼らの社会的連帯は、よそ者に対する不信の共有によって保たれており、また内に対してもこの民族は高度に身分志向的である。民族内部での階級は、フィ−ルド(専攻分野)によって決まり、階級内での身分序列は、モドゥル(数式によって表される経済モデル)づくりの腕前によって決められる。しかし作られるモドゥルの大半は、実際の役には立たず、神前に供える御供(専門誌上の陳列物)として用いられるにすぎない。階級としては、マス・エコン(数理経済学)、ミクロ(価格分析)、マクロ(国民所得分析)、デブロプス(経済発展論)、オー・メトルズ(実証的研究)などがある。階級間の序列は、おおよそ記した順序どおりであるが、最高位のマス・エコン階級は部族の司祭としてあがめたてまつられており、デブロプス階級はモドゥル作りがへたくそなため、また、オー・メトルズ階級は汚らわしい手仕事に従事するがゆえに、いずれも下位に位置づけられている。もっとも、階級間でおたがいどうしけなしあうのが、エコン族特有の風習であり、この部族の階級構造は、一筋縄で片がつくほど単純明快ではない」