メモ(引用)

山本満[1990]「市場と国家――経済と政治の楕円モデル」『国際政治』93号より

「対外直接投資による企業の多国籍化の進展は国家にとってどういう新しい状況または問題をもたらすだろうか。企業と国家にとってどういう新しい状況また問題をもたらすだろうか。企業と国家(企業の母国、受け入れ国の双方)の関係はグローバル化の進む中でどのように変わってゆくだろうか。国際政治経済学の取り組むべき中心課題の一つはこのことである」(p9)

「こうした変化にあらわされているのは、グローバリゼーションの波及が各国産業を再構築の試練にさらし、後者の進展が前者をさらに深めるという相互促進の関係である。北米、ヨーロッパ(EC)、日本(東および東南アジア)という世界の三大市場すべてに完全に参入し生産拠点を持つことが、新たな国際経営環境の下では、競争的なグローバル企業であるための必要条件と考えられるようになってきている」(p11)

「社会生活の全領域を市場経済の自動調整メカニズムに組み込むことはできない。それは人間が経済的動物であるだけでなく自由や安全や名誉や平等や参加や連帯その他もろもろの非経済的価値を求める社会的動物だからである」(p19)

「経済生活の国民国家的枠組みを技術が解体してゆくのを前に、これに見合う公共的利益の国際化を国家間の政治は組織できないでいる」(p19)

「国家の名に象徴されるはずの社会的公共的利益と、その枠組みの中で活性化されるはずの競争的市場の利益、これらを多国間のレベルでどのように組み合わせ、組織するか」(p19)