読了

「何も正月からこんな本を・・・」という気もするが。

世界を葬る男たち―21世紀の征服者 国際マフィア連合 (知恵の森文庫)

世界を葬る男たち―21世紀の征服者 国際マフィア連合 (知恵の森文庫)


国際組織犯罪(武器貿易、マネーロンダリング、麻薬取引、人身売買など)の急増は、グローバリゼーションの裏面としてきわめて重要である。しかし、この分野については学術的な研究があまり進んでいない。とくに日本語で読めるものは、ほとんどないのではなかろうか。

本書も、ジャーナリストの手によるものだが、ストレンジの『国家の退場』でも参考文献に挙げられているとおり、この領域のまとまった著作である。ただ原著刊行が94年なので、その分の古さは否めない。それでも、旧ソ連圏における組織犯罪の急増の背景について理解を深めることができた。ロシアマフィアには、旧ソ連時代の治安部隊や政府高官などが多数流れ込んでいること、彼らにはロシア政府がバックについていること、などは驚きであった。

現在のロシアでの新興民間企業のリーダーの多くは、ソ連時代に権力の座にあったおかげで、国有資産の民営化の際に特権的に安く入札できた者たちのようだ。これが、オリガーキーの正体である。かつての特権階級は、資本主義への移行が自らの利益になることをいち早く察知したからこそ、簡単に社会主義を捨てることができたわけであり、むしろこれこそが、ソ連崩壊の原動力だったように思える。そういえば、似たようなことが、近くの国で起こっているような気がするな。