読了

カラシニコフ

カラシニコフ

破綻国家における銃の蔓延と、それにまつわる問題を知るための入り口になる本。いくつか、興味深いことをメモ。

・東アフリカ地域の紛争で使われているAK銃は旧ソ連や中国製が多い(モザンビークソ連製、シンバブエは中国製)が、西アフリカでは旧ユーゴ製が多く、その輸出を仲介したのはリビアである
・武器輸出には「最終使用者証明書」が必要なので、大規模なヤミ取引になると、どこかの政府が裏で動かないと難しい
ソマリアからイエメンやコンゴ武装車両が輸出されていて、コンゴへはリビアの船が海路で輸出している
・先進国のNGOは、支援先現地の基準で言うと大金を持っているので、破綻国家の役人に目をつけられる。そして現地政府の役人は、査察と称してNGOに滞在し、交通費や日当、食費、物資、官僚の天下りなどを要求する。NGOがこれを断れば、ビザが認められなくなる


ソマリア北部で独立を宣言し、独自の行政府・裁判所・警察機構をもちながら、国際社会から認められていない「ソマリランド」の実態を知ることもできるし、アカデミックには書かれていないけれど、知っている人が読めば、NGOの支援が現地の人的資源をゆがめてしまう(彼らが警備員、通訳、運転手などを雇用する際に、現地の給与水準では異常なほどの高給で処遇してしまう一方で、医師や教師、エンジニアなど社会的に高く処遇されるべき人々が低い処遇でほうっておかれるため)問題や、NGOや支援系の国際機関が無闇に入ることで現地のウォーロードを強化してしまう(スタッフが身代金目的の誘拐対象になり解放のためにそれを支払ったり、私税の支払要求に応じてしまったり、略奪の対処になること)問題なども、読み取ることができよう。もちろん、著者自身は、NGOや国際機関の存在が現地にもたらす意図せざる帰結については、何ら論じていないのだけれども。