第3四半期決算から考えるデジタルブーム

結局、電機10社(NEC富士通、日立、東芝、三菱、ソニー、パイオニア、松下、シャープ、三洋)のなかで、まともに増益だったのは松下とシャープと三菱電機だけであり、残りはずっこけたということになる(ただし三洋は、新潟地震という特殊要因の影響が大きい)。


さて、この「勝ち組」3社の勝因であるが、三菱電機はFA(ファクトリー・オートメーション)に注力してここで稼いだ結果である。つまり、デジタル家電ブームに半ば背を向けたことが、かえって勝因になったと言える。残るシャープと松下の共通点であるが、①シャープは液晶で松下はPDPで、それぞれ圧倒的なシェアを確保してきたこと、②部品の内製率を高めていること、③価格競争に左右されない強みを持っていること(シャープの液晶はテレビだけではなく、携帯電話などさまざまな製品に使用されており、この非テレビの液晶事業はテレビよりも利益率が高い)、というところであり、逆に「負け組」の敗因は、①部品の内製率が低く、②価格競争に左右されやすい商品に傾注しすぎた、というところか。


こうしたなかで、富士通と日立の共同出資による「富士通日立プラズマディスプレイ」社について、富士通は出資している資本の大半を引き揚げることになり(2月2日:http://it.nikkei.co.jp/it/newssp/device.cfm?i=2005020204479xx)、さらに松下と日立がプラズマディスプレイで提携するというニュースが飛び込んできたが(2月5日:http://www.asahi.com/business/update/0205/029.html)、これは要するに「PDPにそんなに何社も参入しても儲からないのであり、ガチンコで生き残り競争をやっていると、お互いに資本の目減りを余儀なくされるので、寡占化で対応してしまえ」ということであり、プロダクトライフサイクル理論的にはこの製品は既に成熟期には入りつつあるということを意味しているのではないか。


そして、今後の注目すべき点についてであるが、まずPDPに限定して言えば、第一に、PDPの主要プレイヤーであり、デジタルバブルでずっこけた結果として9年ぶりに赤字に転落した「パイオニア」がどのような経営戦略を打ち出してくるかであり、第二に、「寡占の国際化」すなわち韓国や台湾メーカーなどとの国境を越えた合従連衡がいつ、どのような形で進むかである。次にPDPに限定せずに薄型テレビ全体に拡張して言えば、第一に、液晶のシャープとの競争がどのように進み、薄型テレビ市場全体の動向と勝者はどうなるのかであり、第二に、これと関係することであるが、Dellエプソンキヤノンなど非電機メーカーがこの市場にどうやって殴り込みをかけてくるのか、ということである。


ほかにもいろいろあるし、このデジタル(家電)ブームとその行方についてはもう少し突っ込んで考えてみたいところではあるが、忙しいのでとりあえず以上とし、必要と時間があれば追って書き加えることにしたい。


(2月6日追記)
と昨日書いたばかりであるが、さらに、富士通が液晶パネル子会社をシャープに売却し、これで薄型パネル事業から撤退、というニュースが飛び込んできた(2月6日:http://www.nikkei.co.jp/news/main/20050206AT1D0500Y05022005.html)。やはりこの事業分野は急速に寡占化に向かっていると言える。そして、製品価格下落のスピードの速さに歩調を合わせるかのように、意思決定のスピードもかつての日本企業の遅さとは比較にならないほど早くなってきているように見える。

(2月25日追記)
三菱電機もプラズマから事実上撤退、同社はリアプロに注力するという戦略を取るようだ。
http://it.nikkei.co.jp/it/news/newsCh.cfm?i=2005022507459j0&h=1