研究会

近年、公的セクターと私的セクターとの切り分けが再編成の過程にある。道路公団郵政民営化も、公的セクターと私的セクターとの領域の再編成の一環と捉えることができるだろう。今日の報告は、この両者の切り分けの原理を、(非競合性・非排除性という経済学のオーソドックスな見方ではなく)、平準(化)ニーズか、差異(化)ニーズかという「ニーズの種類」に求め、検討していこうというものだった。

平準(化)ニーズとは、例えばあらゆる人間の体温や血圧を一定範囲内に保とうとすることを責務とする医療のようなサービスであり(個人の好みで体温や血圧を上下させることはない)、逆に差異(化)ニーズとは、オーダーメイドの服装のように、他人と異なるものを提供する責務をもった製品・サービスである。


端的に言えば、平準(化)ニーズ=公共セクター、差異(化)ニーズ=私的セクターという切り分けになるというのだが、しかしやや説明には納得できない部分が残ったのも事実である。確かに高速道路をいきなり民間企業が作ることはできない。郵便事業もいきなり民間が担うことはできない。膨大な初期投資が必要であったり、全国一律にサービスを提供することができないからだ。かつての国有鉄道も同様である。しかし、いま盛んになっているのは、初期の設営は公的セクターが担うが、運営は私的セクターに任せよう、というものである(最近は公設民営大学というものもある)。ニーズ原理で公的・私的セクターを分けていこうとすると、こうした動向に有効な反論を提供できないのではないか。なぜなら、ニーズ原理では、「設営」と「運営」を切り分けて論じていないからである。


というわけで、課題と問題点が浮き彫りになった報告だったが、その意味でよい報告だったと思う。スキのない報告がよい報告なのではない。議論を喚起する報告がよい報告なのである。