京都・地層・文化

京大の尾池総長(地震学)が、京大生協の広報誌『らいふすてーじ』でおもしろいことを言っているのでメモ。

京都盆地には、琵琶湖より豊富な水が、地下に溜まっている。
・ここに、茶の湯が生まれ、お豆腐や湯葉、おいしい日本酒ができた。
・現在は、工業が、この地下水を使って半導体を作っている。
・断層のズレのところが崩れやすいので、そこに補強のために竹を植えている。
・この竹があるから、うちわとか扇子が京都の産業として発達してきた。
・和紙も、同じくきれいな地下水があったから。
・地下水がたっぷりある場所で育った文化は西洋にはない。それに対して京都の文化は、変動帯の文化。ワーズワースの詩は、大地が動かないところで詠んだ詩。日本の詩は、全部大変動するところで出来ている。


おおむねこんなところか。京都ではよく筍を食べる風習がある(特に春に。東京では若竹煮のようなものを食べる機会がない)のだが、その理由がやっとわかった。

尾池総長の指摘は、地層が地上の文化や経済を規定するのだ、というようにも読める。言うなれば、唯物史観ならぬ地面史観というところか。マルクス主義者は、経済という下部構造が政治という上部構想を規定すると考えるが、経済もまた地層という下部構造に規定されたものだということになる。結局、政治を規定しているとされる経済の下部にもさらに、これを規定する幾つかの土台――地層、家族類型、宗教など――がある、ということだ。こういう観点を踏まえた経済研究というものが、もっとあってしかるべきだと思う。