- 作者: 山田昌弘
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2007/04/20
- メディア: 新書
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少子化の原因に関する議論の基本線は、おそらく本書で、ほぼ決着をみるだろう。
少子化をめぐっては、社会科学の各分野において、とりわけ経済学の分野において、この10年あまりの間、計量分析による分析が、それこそ山のように(本当に山のように)出てきた(この背景には、PCと計量分析ソフトの普及がある)。しかしこうした分析の大半は、少子化の要因を説得的には説明してこなかった。本書は、計量分析の手法を退け(意味ある動態的な分析ができないから)、事実(データ)をこれでもか、これでもか、と積み上げることで、きわめて説得的な議論をしている。「計量分析に頼らずとも説得力の高い議論はできるのだ」いうことを示しているという点で、本書は、少子化をめぐる、計量主義的社会科学に対する、記述主義的社会科学の勝利とさえ言える。
本書で提示された少子化への対応策に異論のある向きもあろう。しかし少子化の原因をこれほど説得的に明らかにした先行研究はなかったと思われるので、この一点だけでも、本書の功績はきわめて大きい。個人的には、その際、家族類型(成人男女の親との同居の仕方)の国際的相違を視野に収めて議論をしたのも評価できる。本書のフレームワークは、香港、台湾、シンガポール、韓国など東アジア諸国で急速に進む少子化の原因に関しても適用可能であり、その意味できわめてグローバルな説得力を有しているとも言える。Highly Recommendな一冊。