メモ(A・スミス)+読了(石井『石油 もうひとつの危機』)

アダム・スミス国富論』第一編「労働の生産性の向上をもたらす要因と、各階層への生産物の分配に見られる自然の秩序」、第十章「業種による労働の賃金と資本の利益の違い」より

「自分の能力を過信して自惚れる人が多いが、この自惚れははるか昔からの悪徳であり、どの時代の哲学者や思想家も指摘してきた点だ。自分の幸運を過信する愚は、あまり注目されてこなかった。だが、この方がはるかに一般的だといえる。心身ともにそこそこ健全な人で、この傾向をまったく持たない人はいない。儲かる確率は、誰でも多かれ少なかれ過大評価するものだし、損する確率は、ほとんどの人が過小評価するものだ。そして、心身ともにそこそこ健全な人のうち、損失の確率を過大評価する人はほとんどいない。」

アダム・スミス山岡洋一訳)『国富論』上、2007年、p.113。

「 リスクを軽視し、身の程をしらないまま成功を夢見る傾向は、人生のなかで職業を選ぶ青年期にもっとも強くなる。この時期に幸運への期待が強く、不運の可能性を秤にかけられない点は、上流階級の若者がいわゆる専門職に押しかけることより、庶民が簡単に兵士になったり、船乗りになったりすることによく示されている。
普通の兵士が損な役回りであることは明々白々だ。ところが戦争がはじまると若者が危険をかえりみず、熱心に志願する。そして、昇進の可能性などほとんどないのだが、いかにも若者らしく、戦功をあげて勲章をもらえる機会がたくさんあると想像する。実際にはありもしない機会の夢想だけが、命をかけることへの代償なのである。陸軍兵士は下層労働者よりも賃金が低いし、そのうえ、勤務ははるかに厳しい。」

アダム・スミス山岡洋一訳)『国富論』上、2007年、p.115。