『アジ研ワールド・トレンド』2010年7月号の特集「『英語の世紀』の地域研究」を読んだ。このなかにある、劉仁傑「台湾における英文ジャーナル論文中心主義の興隆とその影響:『日本留学組』の苦悩」は、特に良いエッセーだった。

人文社会科学の研究は、理工系とは異なり、言語の選択が、研究内容や読者設定と密接にかかわっている。にもかかわらず、こうした世界に、理工系をまねた英文ジャーナル中心主義が押し寄せ、そこにさらにインパクトファクターが絡むと、研究の遂行やアカクデミック・ポジションの獲得で非常に大きな混乱と問題が生じる。これは台湾のような小国でこそ早くに起きた混乱と問題だが、いずれは日本でも似た問題が生じる可能性がある。多くの日本人の人文社会科学研究者、特にまだ定年まで時間のある50歳未満の研究者は、このエッセーと中心とする本特集を、よくよく読んで考えるべきだと思う。