読了(藤井『大地の五億年』)

良い本。

人間は、食料によって供給される栄養分なしに生存できず、人間の生存なしに高度に発展した経済社会も成り立たない。そして、その食料に含まれる栄養分(窒素、リン、カルシウムなど)を供給するのが土壌である。

本書は、土壌そのものと、それに影響する森林、きのこ、微生物などの生物、さらには飛躍的な食料生産増を可能にした肥料などの関係を、多面的に、歴史的展開も含めて、平易に論じている。多くの文系学徒、とりわけ経済学徒が読んでおくべき本である。

著者は、理系の若手研究者ながら、映画や文学作品、格言などを話の入り口に据えながら議論を展開するなど、土壌を専門としない読者をひきつける文才をも持っている。