- 作者: 伊藤修
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2007/05/01
- メディア: 新書
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日本経済の歴史的歩みと現在が簡潔に纏められており、また著者のメッセージも明確であるから、これらの点では、比較的評価できる。ただ、
貿易黒字=〔貯蓄−投資〕+財政黒字
という、おなじみの式について、
(この)等式は、事後的には必ずこうなっているというバランス(対応)関係を示すだけで、どれが原因でどれが結果だという因果関係までは示していないからである。日本が貯蓄超過「だから」、財政赤字幅が小さすぎる「から」貿易黒字になる、という一方的な関係だとはいえない。貿易黒字が貯蓄・投資や財政のバランス状態をもたらしているという方向もあるかもしれず、これだけでは何もいえない。したがって、この原因をいじればこの結果がこうなる、という指針もすぐには出てこない。(pp.117-118)
と述べているのは、いただけない。これはISバランス論の否定であり、多くの経済学者には受け入れられない理解(言明)であろう。野口旭にぶっ叩かれますよ。