「牛サイコロステーキ(結着肉)」とは何か

スーパーで、牛サイコロステーキ280g500円が、半額になっていたので、買ってみた。280gで250円なら、まあ安いし、賞味期限までまだ2日ある、2回に分けて140gずつ食べればちょうど良いだろう、という算段だった。ところが、これは、とんでもない代物だった。


いざ自宅の台所でパッケージをはがそうとしたら、「結着肉」という表記があるのに気がついた。瞬間的に思いついたのは、《これはくず牛肉を添加物で固めたものだな》ということである(この種のカラクリについては、阿部司『食品の裏側―みんな大好きな食品添加物』が参考になるだろう)。


ところが、よく見てみると、以下の表記があった。

この商品は成形加工(結着)したものです。解凍後、フライパンにて弱火で中心部まで十分に加熱して下さい。

わからない表記である。なぜ牛肉なのに「中心部まで十分に加熱」する必要があるのか。そこで「結着肉」でググってみると、東京都目黒区のホームページには、恐ろしいことが書いてあった。

食肉は、食べやすくするため、テンダライズ・タンブリング・結着などの処理がされていることがあります。こうした処理をされた食肉は、内部が微生物に汚染されている可能性があり、十分な加熱を行ってから食べる必要があります。

引用元は、http://www.city.meguro.tokyo.jp/eisei/shoku/o157.htmであるが、どうやら、扱いを間違えると、O-157に感染する恐れもあるらしい。
食べている最中に、これを調べていて、赤みがあったので、慌ててフライパンに戻した。しかし、内部まで十分に火を通すことは、思いのほか難しい。仕方がないので、箸で砕いて火が通るようにした。


もう一点、結着肉がいただけないのは、脂である。結着肉は、くず肉を添加物のほか、脂を使って固めている。だから、火を通すと、ものすごく油が出てくる。一回目にフライパンで焼いたときは、内部まで十分に加熱することが難しかったので、二回目は、まず、電子レンジで「あたため」をしてみた。電子レンジでは、食品の内部から熱が浸透していく。だから、フライパンで焼くときのように、表面がこげているのに内部に熱が通らないということが起こらないだろう、と考えたのである。


さて、こうしてレンジで加熱してみたみたところ、フライパンで焼くよりももっと多くの油が出てきた。140gのサイコロステーキは、具体的には12個ぐらいであるが、サイコロステーキ4個分ぐらいの油脂が滲み出て、お皿に溜まったのである。当然のことながら、加熱されて脂が滲み出た肉はと言えば、かなり嵩も減っている。しかも、脂の抜かれたくず肉の塊は、すっかり縮み上がってしまい、もはやサイコロの形をとどめていないのである。その後、フライパンに移して更に焼いたが、焼き上げた「サイコロ」ステーキは固く、脂もなく、不味い肉であった。


それにしても、消費者はみな、「牛サイコロステーキ(結着肉)」がこのようなものであることをきちんと知った上で、買っているのだろうか。十分に加熱せずに食べて、腹痛を起こしている者も、あるいはいるのではないか。それともう一つ、「くず肉+脂」の塊を280g500円もの高値で売れば、利益率は相当なものであろう。こんなイカレタ商品を100gあたり178円で売りつけているスーパーは、随分といい根性をしていると思う。


しかし、まあ、おそらくどこかのハンバーガーチェーンでのハンバーガーとか、ハンバーステーキ屋で提供されている牛肉の正体は、これなんだろうな。おそろそしや、おそろしや。



(追記)牛肉大国アメリカでは、「年間2万人ものO-157患者」が出ているという(http://www.gourmet-meat.com/joho/shokutyudokuboushi1.html)。