読了(村上『良質なマンションを手に入れる』)

良質なマンションを手に入れる (生活人新書)

良質なマンションを手に入れる (生活人新書)

家電製品を買うときや、自動車を買うときには、カタログを見て仕様を研究するのみならず、情報誌で情報を集めたり、身の回りの人に評判を聞いたり、最近だとネット上でユーザーの感想を読んだりした上で、購入の是非を検討する。日本企業の電気製品や自動車は、世界最高水準の商品であるにもかかわらず、こういうことは、多くの人が当たり前のようにやっていると思う。

ところが、世界競争に晒されておらず、しかも生産性も高くなければ国際的に評価が高いわけでもない日本のマンションデベロッパーが売るマンションという商品を、多くの人は、電気製品や自動車ほど真剣に、技術的な検討をせずに買っている、これが現実である。

しかし、世界最高水準にある数万〜百数十万円の電気製品や自動車を買うための情報収集や検討には一生懸命になり技術的な仕様の把握にも努めようとするのに、世界最高水準にあるとはとても思えない数千万の商品を買うときにろくに仕様の把握もせず、工法技術も知ろうとしない*1というのは、どう考えてもおかしい。本書は、このおかしな事実に気づかせ、またマンションの購入にあたってはまず購入者が買主として相応の勉強をしなければならないことを教えてくれる本であるが、同時に、マンション購入のみならず、賃貸住宅の良し悪しを判断するポイントを知る上でも役に立つ本である。

*1:たとえば、マンションの購入者で「GL工法」「GL構造」という言葉を知っている者がどれだけいるか。私の周りにはこれを知らずにマンションを買ったというツワモノが何人もいる。