読了(佐藤編『使い捨て店長』)

使い捨て店長 (新書y)

使い捨て店長 (新書y)

「雑誌化する新書」の典型みたいな本ではあるが、それにもかかわらず、本書を読んで蒙を啓かれた(ように思った)ことがあった。それは、1990年代後半以降、日本企業は、人件費抑制のために、非正規労働者日雇い派遣、パート、アルバイト、フリーターなど)への依存を深めてきたが、じつは人件費抑制の手段は、どうやらもう一つあったのではないか、「偽装管理職」とはその一種なのではないか、ということである。すなわち、居酒屋、ファーストフード店、衣料品店などのサービス業を中心に、店長を「管理職」に仕立て上げることによって残業代を抑えるという手法が、どうも大規模に活用されてきつつあるのではないか、ということだ。一方における末端層の「非正規化」と、他方における正社員層の「偽装管理職化」は、人件費抑制の2類型、として理解したほうが良いのかもしれない。労働業界の「偽装」といえば、「偽装請負」が有名だが、「偽装管理職」にも目を向ける必要がある。残業代の支払の訴えに関連して東京地裁は先日、マクドナルドの店長を管理職と認めない判決を下したなか、時宜を得た本である。

また、過労死した社員を貶めるかのような発言を委員長がしている「すかいらーく労働組合」という企業内労働組合の「闇」を紹介しつつ、紳士服チェーンのコナカの店長たちが、blogを介して労働組合を結成し、残業代の支払に成功した事例も取り上げて、労働組合の可能性と意義も示している。