読了(廣瀬『強権と不安の超大国ロシア』)

強権と不安の超大国・ロシア   旧ソ連諸国から見た「光と影」 (光文社新書)

強権と不安の超大国・ロシア 旧ソ連諸国から見た「光と影」 (光文社新書)

著者は若手のコーカサス地域研究者だが、いままでに研究上、幾度も生命の危険に晒されてきたことがわかる。これだけ危険な目にあっている社会科学の研究者はそういないのではなかろうか。地域研究の「大変さ」がわかる本でもある。


ロシアと言えばチェチェン問題やコソボに見られるように、民族の分離独立に否定的な国であるような印象を受けることが多いが、モルドバグルジアアゼルバイジャンなどにおいて、ロシアが独立を支援している「未承認国家」があるという問題が、本書では紹介されており、これが興味深い。


編集者が良かったのか、文章は比較的読ませるのだが、だからこそ、若干の日本語の不備が残念でならない。たとえば「かねてから」は漢字の場合は、「予てから」であり、「兼ねてから」と記すのは変換ミスだろう(p.220)。おそらく刷数を重ねるだろうからそのときには訂正をして欲しい。