大学教員になれる確率

平成19年度文部科学省「学校基本調査」データ*1に基づいて、大学教員になれる確率を計算してみると、以下のことがわかった。<<専門分野区分なしで計算>>
平成19年度博士課程卒業者(この場合の「卒業」とは「籍がなくなった者」のことで、学位取得とは関係ない)16,801人*2
平成19年度に博士課程を出て大学教員になった者=2,319人(大学2,191人+短大51人+高専77人)*3
したがって、大学教員への競争率は、16,801/2,319=7.24。つまり7.24人に一人が大学教員になれる計算で、倍率にすると1/7.24=0.14倍となる。これは低いように思えるかもしれないが、医学や工学など、大学教員になるほうが例外的な分野もすべて含んでいるからである。<<社会科学系に限定して計算>>
平成19年度社会科学系博士課程卒業者(この場合の「卒業」とは「籍がなくなった者」のことで、学位取得とは関係ない)1,272人*4
平成19年度に社会科学系博士課程を出て大学教員になった者=267人(大学260人+短大5人+高専2人)*5
したがって、大学教員への競争率は、1,272/267=4.76。つまり4.76人に一人が大学教員になれる計算で、倍率にすると1/4.76=0.21倍となる。これは、学振PDの採用率よりも高いし、日本学生支援機構奨学金免除率よりもはるかに高い。


なお、平成12年度のデータに基づいて計算した
http://home.att.ne.jp/theta/eurospace/3/university.html
とは計算の方法が違うので、一概には比較できない。しかし、社会科学系について言えば、研究者になれる確率はほとんど変わっていない。また、驚くべきことに、大学教員数は平成12年度と比較して増えている(H12:169,318人→H19:183,111人。うち4年制大学は167,636人*6、短大は11,022人*7高専は4,453人*8)。つまり、少なくとも教員数の純増という歴然たる事実を見る限り、大学が「構造不況業種」とはとても言えそうにない。少なくともこの業界で働く人数が純減していない限り、構造不況業種とは形容するのはやや無理があろう。さらに、博士課程の1年次に在籍する院生数は、大きく減少している(H12:23,182人→H19:18,663人*9)。


このデータで惜しむらくは、大学教員になった人数のうち、出身大学院別(国立、公立、私立)の数値がないことである。この数値もあれば、かなりリアリティが出てくるのだが…。