地方国立大学教育学部の闇、地方国立大学教育学部という病

県教委に教え子リスト郵送、6人不正合格…大分大教授が退職
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20080924-OYT1T00638.htm?from=main2

 記者会見した羽野忠学長は「リストを送ったことが、6人の不正合格につながったかどうか判断できなかった。大学の調査には限界がある。大学の処分規定に照らすと、処分には該当しない」と話した。
 教授は16日に退職届を提出し、22日付で受理されたが、合格依頼を改めて否定したうえで、依願退職の理由について「県教委と大分大の間に不明瞭(めいりょう)な関係があったかのように誤解され、教壇に立つ自信がなくなった」と話しているという。


http://d.hatena.ne.jp/eurospace/20080718


論文データを捏造したかどうかは、ピアレビューでわかる。こういう場合は捜査機関は必要なく、大学だけで問題を解決できる。しかし便宜を図ったかどうかは、ピアレビューではわからないから、捜査機関に委ねるしかない。したがって「大学の調査に限界がある」というのはその通りである。


だが、そもそも大分大学教育学部は、どういう了見で、この人を教授として採用したのだろうか。このポストには代々、県教育委員会出身の大物が就いていたことも判明している。想定しうる大分大学教育学部の言い分はこうだろう。すなわち、「大分大学教育学部は、学校教育現場との連携を図ってきた」と。


もとより「学校教育現場との連携」を図るのは大いに結構なことだろう。そんなことは誰も問題にしない。問題は、「なぜ『学校教育現場との連携』=『県教育委員会出身の大物を迎える』になっていたのか」ということであり、このことが問われねばならない。言い換えると、「学校教育現場との連携」を図るにしても、何も別に「県教育委員会出身の大物」を代々招聘することに拘らなくても良いのではないか、もっと他に適材がいたのではないか、たとえば、せめて修士課程を出ているとか、学術業績がもっとある教育現場の人間がたくさんいるのではないか、そうであるならば、なぜそうした人材を採用せず、不明朗な採用人事を繰り広げてまで(注)、代々、県教育委員会出身の大物を招聘してきたのか、ということだ。


(注)『読売新聞』2008.08.21西部夕刊13頁には「大分大教授・助教授に元審議監を3代連続採用 公募制が原則、大学側が勧誘か」という記事がある。下記のとおり。

ついでに言うと、事務長が「昔のことなので採用の経緯については分からない」と言っているが、人事案件の書類や会議の議事録というものは非常に重要なので、きわめて長く厳重に保管されているのが普通である。だから、そうした書類があるはずなのにもかかわらず「昔のことなので・・・分からない」とは、どういうことか。もちろん単にマスコミに対して寝ぼけているだけであろうし、この事務長には責任はないのだが。

 汚職事件に揺れる大分県教委のナンバー2・教育審議監(2003年度までの役職名は教育次長)経験者が、公募制を原則とする国立大学法人・大分大の教育福祉科学部の教授や助教授に3代続けて採用されていた。2人の元助教授は大学側から勧誘を受けたと話しているほか、3代目にあたる現教授は、今年度の小中学校教員採用試験で1次試験の合格発表前に県教委幹部に教え子のリストを郵送していたことが発覚している。同大は調査委員会を設置して連続採用の経緯や教員採用に絡んだ口利きの有無などを調べている。

 同学部によると、県教委OBが最初に採用されたのは00年度。元教育次長が助教授として教育学や小中学校、高校の教員向けの研修を担当するようになった。この元教育次長は01年度まで務め、02年度には後任の元教育次長が同じく助教授として迎えられた。現職の教授は元教育審議監で05年度に就任した。

 同大は、適格者が限られているなど特殊な事情がない限り、教員は公募制を採っている。ところが、2人の元教育次長は読売新聞の取材に「大学側から応募するよう勧められた」と証言した。同学部の尾藤俊武事務長は「昔のことなので採用の経緯については分からない。教育現場をよく知る人材を求めた結果ではないか」としている。

 現教授に関しては、08年度採用試験を受けた教え子14人のリストを1次試験の合格発表前に、かつての部下の富松哲博・現審議監に送付、最終的に11人が合格していたことが分かっている。教授は「採用を働きかけたことはない」としているが、同大は前田明・副学長を委員長とする調査委を設置して調べている。

 九州・山口の8県教委によると、県教委幹部が退職直後に大学に常勤として再就職したのは、今年4月に定年を迎えた熊本県の前教育長が私立大の教授になった1例だけ。3代にわたって就任した大分県のようなケースはない。

 応募の働きかけについて、九州大人事給与室は「公募は全国から人材を集めるのが目的。特定の人物に受験を打診するというのは考えがたい」という。

 口利きととられかねない教授の行為や県教委幹部の大学への再就職について、青山学院大の鈴木豊教授(公監査論)は「かつての上司からリストを送られれば部下は配慮せざるを得ない。県教委幹部が代々大学に再就職すれば口利きの温床になり、公的な試験をゆがめる危険性がある」と指摘するなど、疑問の声が出ている。

 今年度の同県の小中学校教員採用試験では、72人の合格者のうち、大分大の出身者が42人を占めている。