読了(山下『オイル・ジレンマ』)

オイル・ジレンマ

オイル・ジレンマ

著者は日経新聞の記者であり、本書も、著者がこの間に日経新聞に書き続けてきた石油関連の記事をベースにしているらしい。なので、世界のエネルギー関係者へのインタビューによる声の紹介が多く、また全体的に叙述がルポタージュ的である。そして、石油について体系的に論じた書ではない。


ただカナダのオイルサンド開発をリポートした第5章は、類書に記述がないので、使える。世界の原油価格が、NYMEXニューヨーク・マーカンタイル取引所)での投機的取引に主導されるようになったことを石油の「市場化」と捉え、これに金融緩和が大きな役割を果たしたことをリポートした第1章と第2章もまあまあ。北米での代替エネルギー原子力バイオ燃料)や、CO2の排出権取引の動向をリポートした第6章「北米エネルギー革命」は、本書のタイトルとほとんど関係がない。また、(「ジレンマ」なる語の使用は、p.83にあるものの)本書のタイトル「オイル・ジレンマ」が具体的に何を指すのかも、明確になっていない。