読了(瀬川編『石油がわかれば世界が読める』ほか)

石油がわかれば世界が読める (朝日新書)

石油がわかれば世界が読める (朝日新書)

さて、前回のエントリーでは、石井・藤『世界を動かす石油戦略』と、藤『石油を読む』の二冊を取り上げ、藤の単著の内容が、石井・藤の共著本と重複している部分が多いことを批判した。だが石井も責められなければならない。それが、本書(瀬川編『石油がわかれば世界が読める』)である。


なぜ石井が責められなければならないかというと、本書の第一章は、石井と岩間剛一の共著による分担執筆なのだが、この章の内容の一部が、石井の単著『石油 もう一つの危機』とかなり被っているからだ。『石油 もう一つの危機』を読んだあとに、石井による本書の第一章を読むと、「またこの話かよ〜」と閉口させられる。藤といい石井といい、石油専門家には、装いを変えるだけであっちこっちで似たような話をするのが多いのか。そうだとすれば、困った悪習だ。


したがって、本書は、第2章と第3章をマジメに読むのがよい。ただ第2章は石油化学の専門家による石油化学に関する分析だが、ちょっと化学的にマニアックな記述がある。とはいえ、バイオ燃料の落とし穴(バイオ燃料は、カーボンニュートラルなので環境に良いといわれているが、それは燃焼の過程だけを見ているからそう言えるのであって、実は農作物を作ったりそこからバイオ燃料を精製する過程で多量のCO2を排出していて、トータルで見た場合、石油を利用するよりもかえって環境によくない場合がある、とか)などが論じられているのがよい。


本書は、社団法人石油学会の創設50周年を記念し、記念出版委員会が企画して出版したものだそうだ。学会の記念出版物なら、新書で一部に内容の重複があるような書物ではなく、もっと本格的な書物にしたほうが良かったのではないか。学会の威信にもかかわるのだから。