岸恵子『わりなき恋』読了

広告に惹かれて、岸恵子『わりなき恋』を読んだが、面白くなかった。
駄作だと思った理由は、主人公の男女の感情の高ぶりみたいなものが、さっぱり伝わって来なかったからである。アマゾンの書評などを見ると、好意的なものが多いが、否定的なものも少なからずある。好意的なものの多くは、高齢者の恋愛を描いていることに向けられているが、テーマが良ければそれでいいのか。また、時々出てくる社会情勢に関する話を評価する声もあるが、社会科学の人間から見ると、どうも底が浅い感が否めない。おそらく時々出てくる文学に関する話も、人文学者から見ると底が浅く思えるのではなかろうか。

わたしが最近読む小説は、はずればかりである。村上龍の『55歳からのハローライフ』も、高樹のぶ子の『甘苦上海』も、ピンと来なかった。読む小説にのめりこめないのは、年を取ったがゆえに文学作品を受け止めるみずみずしい感性が鈍ったせいだろうか。それとも、疲れているのだろうか。