読了

ケータイは世の中を変える―携帯電話先進国フィンランドのモバイル文化

ケータイは世の中を変える―携帯電話先進国フィンランドのモバイル文化

約半年前に読みかけたまま中断していた(http://d.hatena.ne.jp/eurospace/20041008)ものを読み切ったわけであるが、わざわざきちんと時間を割いて読むほどの価値はなかった。インタビューなど実証はなされているが、分析のフレームワーク(論理)がないというのが致命的である。だから、あまりインスパイアされない。それに、そもそも実証と言っても、刮目に値するような具体例があふれているわけではない。また、フィンランドのケータイ文化の発展度合いは、ある意味では、日本より低レベルである。

どうも最近、海外のメディア・スタディーズ(特にケータイ関連)の翻訳物で「どうして、これがわざわざ翻訳されたのだろう」という本が多くないか。例のラインゴールドの『スマート・モブズ』(ISBN:4757101031)がその典型だ。善し悪しは別として、日本のケータイ文化の発達度は世界一であろう。だからケータイに限れば、世界中でもっともcutting edgeなケースを提供してくれるのはわが国であり、海外のメディア論者はもっと日本に学ぶべきだろう。逆にいえば、これは日本のメディア研究者にとって、アドバンテージになるはずである。


本について、苦言を呈しておくと、人名の表記に不適切な箇所がある(共訳のデメリットが出ている)。さらに細かいことだが、文献表記方式は心理学界のスタイルであるが、これもいかがなものか(日本の心理学界の文献表記方式は、人文・社会科学の中でもきわめて異質であり、個人的には基本的に不適切であり受け入れ難い)。