「経済」に優先する「政治」

悪い方向の分野「治安」が初のトップに 内閣府世論調査
http://www.asahi.com/life/update/0409/005.html?t5


人間にとって、「安全」の希求というものは、常に、「豊かさ」への希求に優先する。「安全」が脅かされているときには、「豊かさ」を追求は二の次になる。つまり政治は経済に優先するのである。言い換えれば、「安全」が政治的な課題として浮上している時代には、「豊かさ」の追求に関する政策的失敗は咎められにくくなる。為政者からすれば、「安全」(セキュリティ)への恐怖を社会的に構築し、それに対応するポーズを取ってさえいれば、経済失政などで批判されることもなく、大方の支持を得られることになる。これほどラクな政治があるとは思えない。言うまでもなく現在のブッシュ政権はこのような図式のなかに位置付けられるだろう。


「経済」に対する「政治」の優先は、とりわけ破綻国家において顕著である。希少資源の有効な分配を目標とする経済学というものは、しょせんは政治秩序(警察、司法、国防等)が担保されたレイヤーでしか成立しない学問である。破綻国家において問題なのは、何と言っても安全の確保であり、これは政治学の問題であって経済学の問題ではない。だがしかし、「経済」に対する「政治」の優先は、今日、世界システム周辺部のみならず、世界システム中心部においても顕著になっている。セキュリティの乱れという恐怖におののくアメリカはその典型だが、わが日本も傾向としてはあまりアメリカと変わらないのである。