- 作者: 佐々木隆生
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2010/03/25
- メディア: 単行本
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国際公共財(但しそれが何を指示するのかは、時代によって異なる)の供給という観点から、国際政治経済史を捉え直して考察した書。普遍性を持つ世界市場は、国際公共財の供給を必要とするが、その供給は不安定である。経済学者ながら専門外の政治史、法制史、軍事史に踏み込んだ第1章と第2章が独特。
著者の主張には基本的には賛成で、賛同しかねる指摘はなかった。マルクス派出身ながら、自由な国際通商体制の維持を強調している*1のも、ホッとした。誤植も少ない。ただ文献の記載方法で、いわゆるハーバード方式(著者名(出版年)方式)なのにibid.を使って「Friedman, ibid., pp157-203」といったように記述している(例えばp.326)のは理解に苦しむ。これは、かつて太郎丸博氏が批判していたものそのままである。
また、GATTの関税交渉について、本書では、トーケイ・ラウンドが1951年、ディロン・ラウンドが1960〜61だとされている(p.246)。これはウィキペディアの記述とも同じである。
しかし岩本他『グローバル・エコノミー』(有斐閣)では、トーキー・ラウンドは1950年9月〜51年4月、ディロン・ラウンドは1961年5月〜62年4月だとされており(p.52。ただし出所は『通商白書』1993年版、29頁)、齟齬がある。ちなみに財務省の資料では、トーキーラウンド(第3回)は1950〜51年、ディロン・ラウンドは1960年〜62年だとされている。他方で経済産業省の資料では、トーキーラウンドは1951年、ディロン・ラウンドは1960年〜61年、となっている。このように資料によって違うので、わたしもよくわからないのだが、ただ佐々木氏の記述は、この経済産業省の資料とは辻褄があっている。