学振PDの採用状況から見る社会科学系研究職の需給

学振PD(社会科学)の採用状況(平成23年度)なるものを見た。
http://www.jsps.go.jp/j-pd/pd_saiyoichiran.html

採用者の分科・細目を見ていて、以下のことがわかった。


社会学16名(社会学13 社会福祉学3)16名
・教育学14名(教育学7 教育社会学2 教科教育学0 特別支援教育5)
政治学11名(政治学9 国際関係論2)
・経済学10名(理論経済学0 経済学説・経済思想0 経済統計学2 応用経済学3 経済政策2 財政学・金融論0 経済史2 経営学1 商学0 会計学0 )
・法学4名(基礎法学1 公法学0 国際法学2 社会法学0 刑事法学0 民事法学0 新領域法学1)


学振の採択にあたっては、分野毎に人数の上限を設けているということはないが、分野毎に採択率はある程度一定になっていると思う。つまり採択者の多い分野は、それだけ応募者も多いということで、分野毎に採択の難易度が大きく異なることはないはずである。このことを前提とすると、次のことが言える。

第一に、やはり明らかに社会学というのは供給過剰分野である。研究者養成大学(旧帝大など)では、どこでも法学、経済学、社会学政治学の研究者を養成している。ところがはけ口となる全国各地の大学において、社会学の教員ポスト数というものは、経済学の教員ポスト数よりも圧倒的に少ない。だから経済学の院生の場合、比較的研究職にありつきやすいのに対して、社会学の院生の場合は研究職にありつくまでが非常に難しい。勢い、学振PDに応募する者も多くなる。

第二に、これに対して法学の少なさが目に付く。もともと法学は、重点化に際しても院生数をあまり増やしていない上に、徒弟制度が効いており、現在でも学位なし・公募なしでの就職が一般的である。言い方を変えると、わざわざ学振に応募しなくても就職できる者が多いのである。特に法学のメインストリームである公法、刑法、民法分野でこの傾向が強い。逆に国際法は傍流である。

第三に、経営学商学会計学といった分野では採択者がごくわずかである。これは、院生数の少なさもあるが、この分野での就職率の良さを反映しているものと思われる。