震災復興費用の財源は?

震災復興費用の財源論が盛んである。


民主党の目玉政策の一つである子ども手当の財源を、復興費用に振り向ける案が議論されている。


現行の子ども手当について、制度設計上の不備があることは事実である。たとえば高所得者に対する制限がないなどは、問題だろう。また日本の貧弱な保育所事情をふまえると、現金よりも現物給付を重視すべきだというのも、たぶん正しいと考える。


しかしながら、社会政策として見た場合、日本では高齢者への支出に極度に偏りすぎており、若年者、特に子どもに対する支出の比率が低い。日本の子どもの貧困率も、OECD諸国のなかでは、高い部類に属するはずである。したがって、少なくともこれまでの高齢者偏重の社会政策を正すための第一歩という点で、子ども手当という発想の方向性は、まったく間違っておらず、至極正当である。いくら緊急事態とはいえ、このことを踏まえずに、子ども手当の財源を復興費用に振り向けるという考え方には、やや違和感を覚える。


日本の社会政策は高齢者偏重なのだから、復興費用は、高齢者向けの支出を削ることで賄うというのは、どうだろうか。具体的に言うと、たとえば年金の支給額を少しカットしたり、医療費の自己負担分を少し増やすなどして、浮いたお金で復興費用を賄うという議論があっても良いと思う。もとより低所得者に対する配慮は必要なので、一律に実施するのではなく一定所得以上に限定すべきだし、被災者についても実施対象外にすべきだが。


子どもという、選挙権のない層から召し上げるという発想は、ある種の「弱い者いじめ」である。発想が貧困である。そうではなく、政策的に優遇されている高齢者に優先的に負担をお願いするという発想が、あってしかるべきではないか。