読了

アジア(特にタイ)における多国籍企業の行動様式や存在感の変貌に関する報告。第3章「メガ化する多国籍企業」の中に整理された鉄鋼、石油、セメント、自動車のグローバル再編動向(M&A)の記述が役に立つ。
また、第4章「新たな『国際競争力』の時代」では、日本型生産システムの国際競争力の要因として、①製造業の現場重視、②事業部制のもとでの製品多様化、③アセンブラーとサプライヤーとの間の緊密な関係、④売上高伸び率とマーケットシェアを重視する経営方針、⑤ステイクホルダー重視、の5点を挙げたうえで、それぞれ1980年代後半以降になって、以下のように変化したとしている。すなわち、①'顧客主導型経営、②'選択と集中、③'コスト削減を工場内あるいはサプライヤーとの関係のなかで進めるのではなく、ビジネスモデルの中で実現する、④'株主資本利益率ROE)の最大化、⑤'株主価値最大化、である。実例として松下が挙げられているのも適切(ちなみに、松下は九州松下や松下寿などの再編、松下電工の子会社化なども進めている)。

啓蒙的な本なので、学部ゼミなどに最適のテキスト。