エレクトロニクス産業の中国戦略

昨年11月の「中国の自動車産業」シンポジウムに引き続く、京都大学上海センター主催のシンポジウムに出席(拝聴)。


日本のエレクトロニクス産業が、いかなるアジア戦略を実行しているかという報告と、中国の家電企業が、どの製品で競争力を持ち、どの製品では競争力を持っていないかを、アーキテクチャ論から検討した報告の2つ。


前者は圧倒的な情報量は特筆すべき価値があったが、分析のロジック自体はあまり明確ではなかったように思う。ただし、日本のエレクトロニクス産業は、90年代前半までは対ASEAN戦略を持っていたが中国戦略をあまり持っていなかった、90年代後半になって、対ASEAN戦略と対中国戦略の両方をもつようになった、そして21世紀に入って両者を統合する動きが出てきた、という指摘は興味深かった。ASEAN戦略と中国戦略が一本化されると、各国の生産・物流等拠点の再編統合の動きが今後ますます活発化してくるであろうし、さらにASEANにおける地域統轄本社(シンガポールに多い)はリストラを迫られるのではないか。


後者は、前者とは逆に、分析のロジック自体は明確であるが、逆に内容の深みには不満が残った。興味深かったのは、モジュール化というのは、部品技術のイノベーションを促進するものであるが(「分業によるイノベーションの促進」)、このイノベーションが起こることによって「単純な組み合わせ型」の生産はかえって難しくなるのだ、という指摘。つまりアーキテクチャというものは、やはりダイナミックなものであって、スタティックなものではない、ということだ。

ちなみに中国の国産メーカーは、DVDについては国内で高いシェアを誇っているが、デジカメは外資に圧倒されているという。これは、アーキテクチャ上、デジカメのほうが生産が難しいからというのと、ブランド力の不足に起因しているようである。