読了/丸屋他『メイド・イン・シャンハイ』

メイド・イン・シャンハイ―躍進中国の生産と消費 (新世界事情)

メイド・イン・シャンハイ―躍進中国の生産と消費 (新世界事情)

書名を見る限り、上海経済論、上海の生産の現状報告だと思わせるが、そうではなく、上海に江蘇省浙江省を加えた「グレーター・シャンハイ・リージョン」(大上海地域)が対象で、しかも生産論一辺倒かと思いきや、ちゃっかり「市場としての上海の魅力」という章もあったりして、「メイド・イン・シャンハイ」論とは必ずしも言えないという意味で、看板に偽りありの書である(サブタイトルには「消費」という言葉が入っているけれども)。


本書は、上海という地域の経済の現状、あるいは上海の現状レポートとしては、手軽で読みやすい。論じられているのは、この地域のIT産業、自動車産業、そして部品・金型産業の現状であり、いずれも著者たちの現地調査の賜物である。ただ啓蒙的な書ということもあってか、事実の羅列の域を出ておらず、理論化がなされているわけではない。こういうものを期待している読者には、ちょっと物足りない。


それと、この分量で1800円というのは、ちょっと高い気がする。内容と値段が釣り合っていない。内容の濃さを求める者は、関満博の『台湾IT産業の中国長江デルタ集積』や、藤本隆宏の『中国製造業のアーキテクチャ分析』を手にした方がよさそうだ。