読了/松本仁一『カラシニコフII』

カラシニコフII

カラシニコフII

好評を博した前著『カラシニコフ』の続編。前著が、主としてアフリカにおけるカラシニコフ銃の蔓延をレポートしていたのに対して、本著では、コロンビア・アフガニスタンイラクにおけるカラシニコフ銃の蔓延ぶりに焦点を当てている。とくにコロンビアでの銃の蔓延・流通に、「中国工業公司」のほか、アメリカの武器業者、さらにはペルー政府の影がちらついていることを指摘しており、きわめて興味深い。

コロンビアは、失敗しつつある国家(failing states)の一つであり、非政府軍が跋扈している国である。この非政府軍の武器購入資金をファイナンスしているのが、麻薬(コカイン)であり、その主たる消費国はアメリカである。ここまでは通常良く知られた話である。

さて、この世界システム周辺部における武器の蔓延(コロンビアにおけるカラシニコフ)と、世界システム中心部における麻薬の蔓延(アメリカにおけるコカイン)は、どのような論理的関係にあるのだろうか。一般的には、周辺部において、略奪や強奪、さらには私益の追求やセキュリティの確保のために、武器の保持が要請され、そのための資金を確保する必要から、麻薬の生産がはじまる、と理解されているように思う。しかし本書を読めば、どうやらこのような捉え方は論理が逆であるように思えてくる。つまり、まず中心部において麻薬の需要が存在し、これを満たすために、周辺部の辺境において麻薬の生産がなされるが、その際、周辺部の当該国政府による麻薬生産・流通の取り締まりに抗するために、当該地域で武器の需要が高まり、そこに先進国のマフィアが、麻薬と引き換えに、武器を周辺部に流す、と理解すべきなのではなかろうか。

もちろん実際には両方の論理が入り混じっているのだろうと思うし、地域や時代によっても違うと思う。ただ後者の論理はこれまでのところ、あまり追究されてこなかったように思う。少し考えてみる必要があるかもしれない。