そういえば

「授業なし・宴会だけ」に弁護士、一橋大と指導教授ら提訴
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20080317-OYT1T00614.htm

この教授は02〜04年度に一度も授業を開かず、各学期の初めと終わりに宴会を開いただけだったという。その後も指導を受けないまま、今年1月に修士論文を提出したが、不合格にされたとしている。


自分の修士時代の指導教官もなかなかのツワモノだった。自分がM2のときの後期のことであるが、指導教員のゼミは、ただの一度も開かれなかった。この教員は、学部のゼミを毎月第一週と第三週の火曜日に2コマ連続で、大学院のゼミを毎月第二週と第四週の火曜日に2コマ連続で行なうということに、時間割上はしていた。これ自体は、何も問題はない。ところがこの教員は、4月の最初の授業時に、「学部ゼミと大学院ゼミを合併して毎週開催するかわりに、ゼミそのものを前期のみとして後期は開催しない(つまり半期集中)!」と宣言したのである。講義ならともかく、ゼミが半期集中だなんてありえないだろう、普通。もちろん後期は宴会も開かれなかった。

結局、この教員はもともとそれほど頻繁には大学には出勤して来ないという人だったこともあって、修論提出直前のM2の後期になると、この指導教員と顔をあわせる機会自体が少なくなり、ゼミもないので一人黙々と修論を書き上げた。もちろん指導は一切受けていない。こんなやり方が文部科学省や大学当局に知られたら、懲罰ものだろう。


これほどの「放置プレー」だったにもかかわらず、たまにこの教員と会うたびに言われたのは、「修士は4年間在籍できるから、2年で修了しようなどと思わずに、まぁじっくりやりなよ」という言葉であった。どうやら「オマエが修論を書くのはまだ早い」とでも言いたいようであった。要するに「留年のススメ」なのである。また、「キミを博士課程に進学させることは、できない」とも常々言っていた。「では、修士課程を2年で修了するのではなく、3年以上かければ、博士課程に進学させてもらえるのですか?」と聞いたら、「いや、それはない。それはできない」とも言っていた。

要は、指導院生の指導を放棄し、無駄に留年を強いた挙句の果てに、博士課程には進学させずに放り出すよ、というのである。修論指導をしないことを咎めるつもりはまったくなかったが、まともな指導を一切放棄しつつ、事ある毎に留年を勧めてくるのだから、もうメチャクチャとしか言いようがない。いったい何度、「指導をする気がなく、博士課程に進学させる気もないのなら、こちらもそれらは望まないから、せめてサッサと2年で修士だけ修了させてくれ」と思ったことだろう。

どうやらこの教員、自分の気に食わない院生はこうやって徹底的に苛めるのが趣味のようであるらしく、調べてみると、実は過去にも私と同じような仕打ちを受けた先輩が何人も居たことが判明した。被害者は自分だけではなかったのである。「これはヤバイ」と思った自分は、「留年のススメ」を強引に振り切って形ばかりの修論を提出し、修士号だけもらって、この教員と縁を切ったのだが、こういう、「指導院生の指導を放棄し、無駄に留年を強いた挙句に果てに、博士課程には進学させず放り出す」というのは「アカデミック・ハラスメント」(アカハラ)以外の何物でもなかろう。


だが、自分がこの研究室を脱出した後に残された後輩は、自分が経験したよりもさらにひどいハラスメントを受けたのである。大学院そのものに絶望した彼は、結局、退学してしまった。裕福な家の出自ではない彼に残されたのは、日本育英会奨学金の返済義務のみである。彼は学部と大学院修士課程の双方で奨学金をもらっていたから、その返済額はおそらく400万円位になったのではないかと思う。最後に会ったとき、「とりあえず東京に出て、バイトをしながら、自分の関心を突き詰めてみます。もし食えなくなったら、そのときは、就農を目指してみようかと思っています」と言っていたが、いまどうしているのだろう。

のちに自分は、別の大学院の博士課程に進学し、幸いにも、そこで博士論文を提出させてもらうことができた。そのとき、博論の「あとがき」に、修士時代にハラスメントを被ったことを、博論指導教員の「これはさすがに削ったほうが良い」という忠告にもかかわらず書いたのだが、これは単に個人的な私怨のみで書いたのではない(博論の指導教員は、私怨のみで書いたと思っていたようだが・・・)。そうではなくて、罪のない後輩を退学に追い込んだこの教員に義憤を感じていたのが大きかったのである。なお、博士論文であるから、国会図書館や出身大学にも所蔵されているが、さすがに「あとがき」には、このアカハラ教員の名前も、上記のような細かい経緯も記していない。それにしても納得がいかないのは、このアカハラ教員は政府の審議会の、それも教育関連の審議会の審議委員なるものを務めていることである。まったくもってふざけた話である。