読了せず(加藤尚武『資源クライシス』)

資源クライシス だれがその持続可能性を維持するのか?

資源クライシス だれがその持続可能性を維持するのか?

「資源問題の一つの根っこが環境問題」という切り口は評価されよう。資源の持続可能性の取り扱い方は、世代間倫理とも接点を持つから、環境倫理学を生業とする著者が資源論に切り込む余地は本来ありそうだ。実際、こういう視点から読み込めば、本書も面白いのかもしれない。


だが資源エネルギーに関する政治経済論として見れば、本書から得るところはほとんどない。ピークオイル論や、ベネズエラチャベス政権運営や、石油と貧困の関連ついてのトピックなどを取り上げているが、いずれも一般的な文献の解説の域を出ない。本書は、倫理学者にしばしば見られる「何をやっても倫理学」的なノリが、あまり有益な成果を生み出さないことの典型例であろう。パラパラとツマミ読みで十分。