抜き書き(外国貿易・資本の文明化作用)

外国貿易・資本の「文明化作用」と言ってもこの時期には資本の輸出による「文明化作用」ではないということである。しばしば資本輸出すなわち一国から他国に輸出された資本の活動そのものによる「文明化作用」と誤用されて理解されることがあるので注意しておきたい。もしそう理解したいなら、それはマルクスの言う概念ではない。それでは外国貿易・資本というのは何を指すか。最初の外国貿易は、国際的なW-G-W一般、国際的な単純商品流通と考えてよかろう。それでは資本というのは、いったい何か。それは資本によって駆動される外国貿易という意味で、資本の循環G-W・・・P・・・W'-G'の中に現れるG-Wと、W'-Gとして、ここでは使われている。それは、既にマニュファクチュア時代に現れるが機械制大工業時代に完成された形となる。したがって力点は外国貿易に置かれているのであって、資本の循環にはめ込まれた外国貿易を意味しており、資本自体が外国貿易から独立して外国に輸出された状態における「文明化作用」を表すのではない

吉信肅(2006)「貿易理論における若干の未解決問題の解明に寄せて:商学部貿易論担当40年の回顧」『關西大學商學論集』51(1/2/3)、p.298より。