読了(ディートン『大脱出』)

大脱出――健康、お金、格差の起原

大脱出――健康、お金、格差の起原

2015年のノーベル経済学賞受賞者のアンガス・ディートンの啓蒙的著作『大脱出:健康、お金、格差の起源』を読了。人類はどのように進歩してきたのかを、「健康」と「所得」の伸び、ならびにその不均等な伸びによる「格差」の観点から分析している。

第一部では、人類の健康(寿命や公衆衛生の変化)の議論がかなり長く続く。第二部では、所得の不平等をめぐる諸議論。第三部は、途上国開発援助がいかに無駄かを議論している。隣接領域にも目配せがなされており、『暴力の世界史』のスティブン・ピンカー、『銃・病原菌・鉄』のジャレド・ダイアモンド、『経済成長の世界史』のエリック・ジョーンズなどの議論もまぶされている。第三部では、開発経済学の著名な論者の見解や、近年の研究動向なども押さえられている。

丁寧に議論を追う必要はあるものの、内容そのものは極端に難しいわけではない(ただ第3部は、第1部・第2部よりもややハードルが上がる)。学部上級生でも読めるのではないか。