読了

脱「ア」入欧―アメリカは本当に「自由」の国か

脱「ア」入欧―アメリカは本当に「自由」の国か

『定常型社会』の著者による本であり、環境・福祉といった内政と、国際関係という外交を一貫した社会モデルのなかで考えるという触れ込みだが、この点について曲りなりに論じているのは100ページあまりの第一部だけで、半分以上を占める第二部は、アメリカ文化社会論である。ただし、このアメリカ文化社会論が、単なる体験的エッセーや通俗論にとどまらず、思想史や人類学などを援用しながら構成されているというのが出色。

なぜアメリカの料理本には盛り付けの写真がないのか、なぜアメリカの旅行ガイドブックには文章ばかりで写真等がほとんどないのか。これらを、「時間的文化」と「ビジュアル文化」という二つのキー概念を用いて説明しており、興味深い。



今日は学会2日目だが、報告内容にあまり関心をもてないのでパスして、都内で知人と会うことにする。
お昼に大学院(修士)時代の知人と銀座で再会。この人のblogを見ていると、どうも職場を退職しそうな感じだったので、単刀直入に聞いてみたところ、案の定「3月末で退職、大学院に戻る準備をする」とのこと。勤務先ではかなりの激務で休みもろくに取れず、体調を崩しがちだったうえに、正直者が馬鹿を見るような目に遭っていたらしい。それならば、辞めたほうが正解だろう。ゆっくり休んで、体調を回復させたら、次のステップに向けて頑張って欲しい。博士課程からの編入には特有の困難があるかもしれないが、大丈夫、きっと上手くやれる。大学院に戻った暁には、職場での経験も活かして研究に邁進して欲しい。それにしても、この人のように能力の高い優れた人材を使いこなせない組織というのは、どうにかしていると思う。


昼食後、知人と別れて一人ABC(青山ブックセンター)六本木店へ。昨年秋に訪れた時にも、ちらっと感じていたことだが(http://d.hatena.ne.jp/eurospace/20041009)、書店としてのポテンシャルが、信じられないほど大きく落っこちてしまっている。かつては、この店の棚をチェックすれば、あまり流通していない優れた学術書を発見することができたのだ。だが、もはやそのような書物を発見することはできない。それに場所柄なのか、IT関連の書籍が馬鹿みたいに増殖していて、単なる街の本屋と変わらなくなっている。もはやこの店にcutting-edgeなものを見出すことはできなくなってしまったようだ。むかしは、東京に来た時に訪れる価値があったのだが、もうわざわざ足を運ぶ価値はない。残念なことだ。


再び銀座に戻って別の知人と再会。街中をウロウロして店を探す。新橋の近くの居酒屋へ。この知人とも知り合ってから随分と立つのだが、今回はじめて、「この人はじつに頭の回転が早い」ということを思い知らされた。というのも、じつに深くかつ正確に、相手(自分)の状況に思考を巡らせているのである。
考えてみると知り合った当時からそうだったに過ぎない。だけど当時、僕はこのことにほとんど気付いていなかったように思う。どうして気付いていなかったかというと、僕のプライドが高かったからか、また単にバカだったからだろう。いずれにしても、こういう能力の高い人が、僕の思考を喚起してくれるのは確かである。
結局、長々と話し込んでいる内に、予定通りと言うべきか、最終の新幹線を逃してしまった。店を出ると、さすがに日曜夜の銀座通りは閑散としていて気持ちがいい。新橋駅の改札で別れる前、なんだか随分と丁重な励ましをもらってしまった。確かに4月からオーバードクターだし、社会的には一層しがない身分になるわけだが、個人的には精神的に追い詰められているわけでもなく、楽しくやっているのだが。「精神的につらそうな顔つき」でもしてたかな?それとも今後、苦境に追い込まれる「絵」でも見えてたとか?


見送って一人になってから、さてどこに泊まろうかと考える。前日泊まった川崎のホテルでもいいが、夜も遅いし移動が面倒だ。ということで、東京上京時に常宿にしているホテル(http://www.thehotel.co.jp/arietta.html)にTEL、「空いている」とのこと。よかった。いつもほぼ満室のこのホテルも、さしもの日曜日は空きがあるようだ*1。山手線で五反田へ移動しチェックイン。やはり泊まり慣れたところは落ち着く。昨晩よりよく眠れそうだ。

*1:その後、ホテルに到着してチェックインしていると、フロントマンが外部からの電話に対して、「本日は満室でございます」と断りを述べていた。あと30分ぐらい電話が遅かったら、自分が断られていたのだろう。