読了

下流社会 新たな階層集団の出現 (光文社新書)

下流社会 新たな階層集団の出現 (光文社新書)

いまさら、という気もしないでもないが、一応メモ。
この本を一言で説明するならば、「定式化された事実を述べた本ではなく、仮説を提示した書」ということになろう。既にあちこちで指摘されているけれども、とても統計的に有意な説明ではない。なんとなく「そうかなー」と思うところが多いけれども、「証明」とは程遠い。しかし、では価値がないかというと、そんなことはなく、むしろこの本を出発点として、今後、より緻密な検証がなされるべきであると思う。そういう意味では、研究課題を提示した本だと言える。後半になると、「では、どういうモノやサービスが下流民に売れるか」というマーケティング的な色彩が強くなるのは、同じくマーケティング屋による『〈現代家族〉の誕生―幻想系家族論の死』 (isbn:4326653051)と似ている。

個人的にこの本で関心したのは、第一に、若年層女性を「お嫁系」「ギャル系」「ミリネーゼ系」「かまやつ女系」「普通のOL系」に、また若年層男性を「ヤングエグゼクティブ系」「ロハス系」「SPA!系」「フリーター系」と類型化していること。これはなかなかうまくできた類型化だと思う。またロハス系は、ヤングエグゼクティブ系の男を「教養がなくて暑苦しい奴だと内心軽蔑している」というくだり(p.77)、著者の実感もこもっている気がする。三浦さん、あなた「ロハス系」でしょう?

第二に、専業主婦というのは、徐々に少数の者の特権である時代に逆戻りしつつあることが示唆されていること。いまや、夫の高収入なくして専業主婦にはなれない。そして高収入の男性というのは、高学歴であることが多く、高学歴の男性と結ばれるためには、女性もまた高学歴でないと出会いの機会がない。

第三に、自らを下流であると規定した者の言葉を借りるかたちで、「だらしない」「のんびり」「食べることが面倒くさいと思うことがある」「料理をするのが面倒だ」などが下流の性格であることをハッキリと指摘していること。逆に、「きちんとした」「てきぱきした」「料理をするのが好きだ」などは下流には少なく、上流に多いという。そのとおりだと思うが、ここまで言って大丈夫か。