ドリコム社のIPOとストックオプションの威力

株式会社ドリコムは、内藤裕紀氏が京都大学経済学部在学中の2001年に設立したばかりの、ブログ事業を主力としたベンチャー企業であり、2006年2月9日、東証マザーズに上場した。公募価格は76万円であったが、上場初日は値が付かず、取引3日目の2月13日になって、ようやく347万円で初値が付いた。当日はその後ストップ高、翌14日もストップ高となり447万円となった。公募価格の5.9倍である*1。これは凄い値上がりである。しかし、こんなことに驚いてはいけない。


同社が近畿財務局に提出した「新株式発行ならびに株式売出届出目論見書」を見ると、同社は上場前に5回にわたって新株予約権、いわゆるストックオプションを設定している。その大半は、同社の従業員に割り当てられており、割当株数は、おおむね数株〜数十株となっている。「新株式発行ならびに株式売出届出目論見書」には、その割り当てられた者の氏名と、割当株数までが記されているが、ここには記さない。


注目すべきはストックオプション行使時の払込金額である。初回を除く第2回から第5回のストックオプションはいずれも、わずか55000円を払い込めば行使できることになっている。つまり、ストックオプションを1株割り当てられた者は、現時点で441万5000円(4470000-55000)という含み益?を手にしていることになる。5株割り当てられた者なら2200万、10株なら4410万である!


久しぶりに、ストックオプションの威力を見た気がするが、ITバブルの頃のシリコンバレーでは、この程度の話はごろごろしていたのだろうか。同社の「新株式発行ならびに株式売出届出目論見書」を見ると、ストックオプションを割り当てられた者のなかには、見知った者の名前も見えて、とてもうらやましい。こんどぜひ奢っていただきたいものである(笑)。


ただし、ストックオプションの行使請求期間は、初回を除いて、平成19年の半ばから平成27年となっているから、実際にはまだ1年以上は行使できない。しかも同社の2月14日時点での時価総額は623億円にもなっているが、06年3月期の売上高は6億9000万円、利益は2億円の見込みだというから、現在の株価はバブルの色が濃厚であり、天井をつけた後は、下落していくだろう。

*1:実は自分も、ドリコムにはかなり目をつけていて、新規公開株を得るべく抽選に望んだのだが、残念ながら落選してしまった。