読了(石見『グローバル資本主義を考える』、田中『世界の小国』)

実に久方ぶりに、まとまった読書ができた週末だった。新幹線での移動(往復6時間)があったがゆえに、車内でのまとまった読書時間が取れた、というのは皮肉だが。

グローバル資本主義を考える (シリーズ・現代経済学)

グローバル資本主義を考える (シリーズ・現代経済学)


夏休みに、国際経済・世界経済のテキストブックの類を何冊か読んで、多数の執筆陣が分担して執筆したテキストの類が往々にして根本的欠陥を持っていることを実感した。というのは、執筆者間の調整がなされていないものがあるのだが、その章をまたいた調整不足が読者を迷わせてしまい、テキストとしては使いにくいのである。そういう意味で、単独の著者によるまとまったテキストの有用性を痛感していたところだったので、本書のような、単独の著者による学部上級生〜大学院初年度を対象とした書物(東大での講義が元になっているとのこと)の存在は、単独の著者による包括的な世界経済分析の書物が激減しているなか、ありがたい。
本書は、講義を基にした著作なので、本格的な学術書ではない。しかし、グローバリゼーションや貿易と、貧困との関係については、最近の研究動向がそれなりに踏まえられいるし、それらに対する著者の見解が明確に述べられており、好感を持った。取り上げられているトピックは、貧困・格差、国際資本移動と金融危機自由貿易、環境であり、これら多様な分野が単独の著者によって論じられているところに、本書の意義がある。


世界の小国――ミニ国家の生き残り戦略 (講談社選書メチエ)

世界の小国――ミニ国家の生き残り戦略 (講談社選書メチエ)

楽しい本である。人口百万人以下の世界の小国(国連・世銀での呼称は「マイクロ国家」)44カ国を取り上げ、その独自の存在意義、抱えている開発上・国際政治上の課題、発展戦略、小国の歴史と系譜などが論じられている。地域的には、小国が多く存在する太平洋、カリブ海、欧州、アフリカ、中東湾岸が取り上げられているが、論述には少し濃淡があり、アフリカと中東湾岸の小国については、さらっとした記述にとどまっている。他方で、著者がこうしたミニ国家に注目するきっかけとなったツバルを含む太平洋やカリブ海の小国群については、相対的にしっかりとした記述がなされている。自分自身も小国そのものについては、かねてから関心があり、加えて破綻国家との関係で、とくに太平洋の某島嶼小国については、他の地域の島嶼諸国との比較研究をそのうちしようと思っているので、研究意欲を掻き立てられた。