- 作者: 浜田和幸
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2008/10
- メディア: 新書
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入門的な書としては悪くない。原油無機説という異端の学説(「原油は地球のマグマに近い超深度地帯で自然発生的に形成された資源」(p.126)、「原油は地球の超深度地帯に自然発生的に生成されており、地表に向かって常に移動を重ねている」(p.132)という説)を好意的に評価するなど、ホントかな?と思えるような箇所もあるし、07年〜08年の原油価格高騰がそのまま続くような記述があったりするなど、現時点から見ると、ちょっと外れている部分もなくはない。
しかし、原油価格高騰のメカニズムを、先物市場やソブリン・ウェルス・ファンド(国富ファンド)と結びつけて論じている点や、ピークオイルがまもなくやっているという説がかなり怪しい説であることを説得的に論じている点、さらに原油の埋蔵量のデータがまったくあてにならないばかりか、原油の生産量でさえ、OPECのデータとIEAのデータとではかなり開きがあることことを強調している点などは評価できる。
これは私の師匠があるところで書いているとおりだが、実のところ世界の原油の生産量・消費量に関する正確な統計は存在しない。いくつかデータはあるが、どれも食い違っていて、どれが正しいのかは世界の誰にも判然としないのである。こうした情報の非存在性こそが、原油をめぐる不安心理と、それをうけた価格高騰に一役買っていることだけは、明らかである。