メモ(法人減税)

「財政健全化に向け、消費税率15%程度まで段階的に上げる必要があるでしょう。一方、法人税の下げは必要ない。法人税が下がったから投資を増やそうと考える経営者はいません。税率にかかわらず、経営者は成長に欠かせない投資をします。それより財政の立て直しを急ぐべきです」(松本正義「インタビュー領空侵犯:日本再興、IMF監視下で」『日本経済新聞』2011年7月4日)

法人税減税が投資増につながらないことを指摘している経営者(松本氏は住友電気工業社長)は、非常にまともである。私の知る限りでは、こう断言している経営者は、ほかにオムロン社長の作田久男氏しかいない。作田氏はこう言う。

――国際競争力強化のために法人課税の実効税率(40%程度)を下げよという意見に必ずしも賛成ではないとか。
「法人減税だけで日本企業が強くなれるでしょうか。仮に実効税率が40%から25%に下がったとして、利益が100億円の企業が、新たに手元に残った15億円を設備投資に回すとは限りません
「日本経済は経済成長と財政再建社会保障の3点で問題を抱えた複雑骨折状態です。国にカネが無いのだから企業もまず我慢して納税し、全体の態勢を整えないと。小さな政府、小さな行政と言っている間に国の借金がますます膨らんでしまいます」
――とはいえ経営者の間では税負担が重いという声が強いようです。
税率だけを他国と比較しても無意味です。国際競争力は法人税率だけではなく、人件費をはじめ多くの要素が絡んで決まります。法人税率のような一部だけを取り上げるのは議論のやり方として公正でしょうか

(作田久男「インタビュー領空侵犯:まずアジアとFTAを」『日本経済新聞』2010年8月23日)


わたしには、法人税率を下げないと、日本と日本企業は、外国と外国企業との生き残り競争に勝てないという説が、どうしても信じられない。なぜなら、いまの日本で、法人税率下がることで投資が活発になるとはとても思えないからだ。

実際のところ、日本企業はお金を持て余している。教科書的には資金不足主体であるはずの企業が、近年、資金余剰主体になってしまってもう10年以上が経過している。これは、企業が活発に投資したい機会そのものがないことを示している。こうしたなかで法人税率を下げて投資が活発になり景気が良くなる・・・そんなはずがない。考えるべきは法人税率の引き下げではなく、企業経営者のアニマル・スピリッツに火をつけるような投資機会の創出だろう。