抜き書き

あらゆる事物は社会のなかで複雑に絡み合い影響を及ぼし合っている。このあまりにも自明な事実は、しかし、今日の細分化された学問研究の諸領域のなかでしばしば後景に追いやられ、理論的な精緻化や定量的な分析のために現象の断片を全体から切り離すことで得られるクリアな属性こそが「科学的」議論の助けとされてきた。事物相互の関連性は希釈され、そのうちのいくつかは仮説を立証するための従属的ファクターに格下げされてきた。

岩崎葉子『サルゴフリー 店は誰のものか:イランの商慣行と法の近代化』(平凡社、2018年)、176ページ。