- 作者: 玄田有史,斎藤珠里
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2007/01
- メディア: 新書
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『冷静と情熱のあいだ』(辻仁成・江國香織)を真似したと思しきタイトルの本。少子化の原因としては、これまで、晩婚化だとか産休が取れない企業社会の息苦しさだとか子どもを育てることに夢をもてない社会になっているからだとかワークライフバランスの欠如だとか男性がいまだに性別役割分業観に囚われているとか幼稚園・保育所の整備不足だとかいろいろと言われているけれども、こうしたなかで、
「みんないろいろ言ってるけど、そもそも日本人ってセックスしてないじゃん」(セックスしていないのに、どうして出生率が上がるの)
という、これまでの議論の枠組みそのものを突き崩すような主張をドーンと提示したところに、この本の意義がある。本書の分析によると、この本で扱っているデータからは、「長時間労働」→「セックスレス」という因果関係は、統計的には認められないという。しかし、「長時間労働とストレス」「ストレスと職場の雰囲気の悪さ」「職場の雰囲気の悪さとセックスレス」は統計的に有意なので、間接的には長時間労働がセックスレスに影響しているかもしれない、とも示唆されてはいる。
本書の分析結果で驚かされるのは、仕事での挫折経験があったり、失業経験があったりすると、セックスレスになりやすいという事実だ。そして、「失われた10年」は、若年労働者の多くに不安定・不十分な雇用しか提供してこなかったという意味で、仕事にまつわる挫折経験や失業経験を若者に不用意に与えすぎた時代でもあった。本書は、90年代大不況が、日本人を全体としてはセックスから遠ざけてしまったことを、たしかに明らかにしている。
分析結果の詳細はこちら。
http://jww.iss.u-tokyo.ac.jp/publishments/dp/dpj/pdf/j-154.pdf
以下も参照。
http://d.hatena.ne.jp/eurospace/20061102