田畑 伸一郎「書評 塩原俊彦著『パイプラインの政治経済学--ネットワーク型インフラとエネルギー外交』」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjce/46/1/46_1_1_134/_pdf

本書は,1 年に 1 冊を上回るような量産体制を続ける塩原氏の2007年の作品である。著者のこれまでの本に見られる,ねちねちと調べ上げる手法は,この本でも健在である。

塩原氏の著作には,後に続く研究者のためのガイドブックというおもむきが常にある。文献を渉猟して得られた,多くの論者の主張を,できるだけ忠実に紹介するというスタイル,あるいは,様々な手段で入手した膨大な情報を,一定の比較が可能な形にまとめ上げるというスタイルである。本書でもこのスタイルが踏襲されている。あえて,このスタイルの問題点を上げるならば,著者自身の主張を読み取るのが難しい箇所が多々あるという点である。より明示的に自身の主張を展開したらどうかと思うのは,評者だけであろうか。

ねちねち調べて上げているが、調べたことの記述が多い半面で著者の主張が少ない、という評価は、誉めているのか貶しているのか。