日経平均の歴史:1949-2006

東京証券取引所が戦後再開されたのは1949年5月16日のことである。この東証再開の1949年から現在まで55年余にわたる日経平均株価の月足チャートを見る機会が、この正月にあった。すると、急速に上昇していく時期と、停滞ないしは下落の時期とに大きく分けることができる、ということに気づいた。どこからどこまでを一時期と見るかは人によって異なるだろうが、これはほとんど誰も指摘していない新発見だと思うので、考察してみたい。


上昇期は以下のとおり。
第1上昇期・1950年5月:85円25銭〜1953年2月:474円43銭(5.6倍)・・・34ヶ月
第2上昇期・1957年12月:471円53銭〜1961年7月:1829円74銭(3.9倍)・・・44ヶ月
第3上昇期・1965年7月:1020円49銭〜1970年4月:2534円45銭(2.5倍)・・・58ヶ月
第4上昇期・1970年5月:1929円64銭〜1973年1月:5359円74銭(2.8倍)・・・33ヶ月
第5上昇期・1982年10月:6849円78銭〜1986年8月:18936円24銭(2.8倍)・・・47ヶ月
第6上昇期・1986年10月:15819円55銭〜1989年12月:38915円87銭(2.5倍)・・・39ヶ月


上記以外のうち、
1953年2月:474円43銭〜1957年12月:471円53銭(上限57年5月595円46銭−下限54年3月314円8銭)・・・59ヶ月、
1961年7月:1829円74銭〜1965年7月:1020円49銭・・・49ヶ月、
1973年1月:5359円74銭〜1976年11月:4451円62銭(上限73年1月5359円74銭−下限74年10月3355円13銭)・・・47ヶ月、
は停滞・下落期といってよい。おもしろいのは、1960年代の前半で停滞・下落していることだ。この時代は高度成長の時代だが、株価は先行性があるので、既に第2上昇期で織り込んでいたものと思われる。65年はいわゆる「証券不況」の年で、このとき経営の行き詰まった山一證券に(一度目の)日銀特融が発動された。


さらに、停滞・下落期ではないが、上昇期とも言いがたい時期が一度あり、それは
1976年11月:4451円62銭〜1981年8月:8019円14銭(1.8倍)・・・58ヶ月
である。


以上からわかることは、
(1)いったんトレンドが発生すると、おおむね3年から5年(36ヶ月〜60ヶ月)程度継続する
(2)上昇期には、最低でも2.5倍の上昇を見せる
ということである。
ただし上昇期の後スピード調整を経て再び上昇期となった場合、すなわち「第3上昇期+第4上昇期」および「第5上昇期+第6上昇期」には、前者で5.3倍、後者で5.7倍となっている。そしてこれは、偶然にも第1上昇期の上げ幅(5.6倍)とほぼ同じである。


ところが1990年1月から2000年4月(ITバブル)までの10年間は、こうした経験則が通用しない時期になっている。「上昇期」「停滞・停滞期」ともに判別が難しく、期間も短く、さらに上昇期とみたとしても、その上昇幅が小さい。このような変則は、資産バブル崩壊の調整の激しさを物語っているとも言える。


そして上記の経験則(いったんトレンドが発生すると、おおむね3年から5年程度継続する)は、2000年4月に復活する。すなわち、下落期として
2000年4月:20833円21銭〜2003年4月:7607円88銭・・・37ヶ月
となる。


さて、今回の2003年4月以降の上昇が、もし「第7上昇期」と称するべきものになるならば、残された課題は、2003年4月の7607円88銭を底とする上昇の天井の時期と株価はどうなるのかである。以下のようになる。
(1)上昇期間を、第1上昇期から第6上昇期でもっとも短い33ヶ月とした場合。この場合の天井の時期は、2005年12月となるが、これは既に過ぎている(したがって、期間で見る限り、今回の上昇は、「第7上昇期」と称されるべき資格を既に得ていることになる)。
(2)上昇期間を、第1上昇期から第6上昇期の平均の42ヶ月とした場合。この場合の天井の時期は、2006年9月となる。
(3)底値からの値幅を2.5倍とみる場合。この場合の天井の株価は19017円。



さて、「いったんトレンドが発生すると、おおむね3年から5年(36ヶ月〜60ヶ月)程度継続する」という発見を、私の株の師匠に話したら、「まさにキチンやな」と言われた。実際そのとおりで、「第1上昇期から第6上昇期の平均は42ヶ月」だから、これは設備投資循環のキチン波(約40ヶ月周期と言われる)とほぼ対応しているのである。問題は、なぜいったん上昇するとその上昇幅が2.5倍以上となるのかであり、こちらは、いまのところよくわからない。誰か分かる人がいたら、推測で構わないので教えてほしいものである。


ちなみに、私の株の師匠は、「損切をしたことがない」「買った株を買値の2倍以下の値段で売ったことがない」「いったん買った株は、おおむね2-3年程度保有することが多い」と言っている。勘の良い読者は、この人の売買の仕方が、「いったんトレンドが発生すると、おおむね3年から5年(36ヶ月〜60ヶ月)程度継続する」「いったん上昇するとその上昇幅が2.5倍以上となる」という経験則の範囲に収まっていることに気づくだろう。
人間は神様ではないから、底値や天井で売買することはできない。だが売買方法と売買時期を大きく間違えさえしなけえれば、「いったん株を買ったら、2倍になるまで待つ」という戦略は2-3年というスパンで見れば正しく、しかも十分に達成可能と思われるのである。つくづく、この人のことは凄いと思っていたのだが、しかしそのパフォーマンスは、歴史上の経験則から見る限り十分に説明可能であることがわかって、少しホッとした。